遂に、脳腫瘍を患い、左半身がマヒし、身体も起こせず、歩けず、お手洗いにも一人で行けず、意識の錯乱もある母の入院の日がやってきました。
こんな状況になっているとはいざ知らず、様子を見るだけになるかと思われた今回の帰省ですが、母の入院を見届ける事ができることになり、ホッとしています。
手術は1週間後なので、付き添いはできないけれど、母が入院さえしてくれれば、介助の手は必要なくなり、一先ずお役御免になるでしょう。
実家の家族にしても、心配事や面倒事が減り、いつものペースに戻れることにホッとしている様子。
母の状態の事は、心配でないわけじゃないのだけれど、正直な所、厄介払いができた事にホッとしていた。
こんな表現したくないけど、綺麗事を書いたって、リアルな文章にはならないのだ。
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★第11話
★第12話(最終回)
入院準備!前日には、冊子とにらめっこし、色々と用意する
そんな訳で早朝、妹の車で病院へ出発。
半身麻痺の母を介助しながら車に乗せるのは大変なんだけど、トイレに連れて行くよりは幾分楽な感じ。
実は、私は数回入院した事があるのですが、いつも緊急入院(大した病気じゃない)だったので、事前に何か用意したりする事は無かったんですよね。
事前準備をしたといえば、出産の時くらいなんですが、それでも、産院の場合は病院側で一式用意してくれてたりして、タオル数枚とお金さえあればOKだった記憶なんですが、今回は、旅のしおりのような冊子と共に、「入院時に用意していただくもの」みたいな案内が入っていた。
その内容は、盛りだくさん。
ええ、入院するのって、こんなに準備するものがいるのか!?
パジャマ3着程度に、タオル、洗面用具。
下着類やカーディガン。
携帯電話に充電器。
特に、母は今、認知の低下と意識の錯乱で、携帯電話が無いとどんなパニックを起こすのか分からないから、これは忘れてはいけない。
割れないコップ、ブラシ等の身だしなみ用品、入れ歯ケース、入れ歯を洗うやつとか、入れ歯を安定させるチューブ薬に、入れ歯を洗う容器。
歯ブラシや歯磨き粉(入れ歯なのにいるんか?)、スリッパも自分持ちだ。
というか、スリッパは危険なので、必ずかかとも覆うタイプの室内履きと書かれている。
それから、不織布のマスクやウェットティッシュ等々。
「入院のしおり」の最後の方には、準備に疲れた家族の程よいタイミングで目に付くように、しれっと「レンタル品のご案内」も紛れており、病衣やタオルのレンタルもできる旨のリーフレットも入っている。
レンタルはいくつかのコースに分かれており、病衣だけとか、オールレンタルとか、なかなかビジネスライクな感じに価格設定もされている。
どんとこい入院!・・・て感じ・・。
案の定罠にはまった私は妹と、「面倒になったらレンタルでいいか」等と話しながら入院準備を進めた。
術後は暫くお風呂も無理だから、バスタオルも少なくていいか・・・。
と思ったんだけど、これがちょっと盲点で、入院は手術の1週間前なんですよね。
その間に、介護者がお風呂に入れてくれるので、タオルもパジャマもそこそこ必要な事に、後で気づいた。
母が一人で動けるのなら、お金さえあれば売店で何とか出来るんだろうけど、今や意思を伝えるのも一苦労の上、動けないんだから、どうすることも出来ない。
入院翌日、母は「ジュースが飲みたい」とか弟に電話をいれ、弟はわざわざジュースを持って行ったらしい・・。
で、弟情報によると、入院後の母は、ちょっと声が元気になってたらしい。
家で臥せってても邪険にされるし、入院すれば手慣れた看護師さんから優しくしてもらえる。
WINWINだ。
それと、これは結果なんだけど、母は半身がマヒしていたので、おもらしをしたり、食事をこぼしたり、戻したりすることがあり、パジャマを汚す事も多く、割と頻繁に汚れ物は引き取りに行かなければならなかった。
でも、その度言いそびれて、結局レンタルを使う事はなかったんだけど、なかなか、一人では何もできないという事について、想像力の働かない家族であった。
さて、入院の準備は完了(?)。
準備はほとんど妹がしたんだけど、ボストンバッグ2つと、なかなかの大荷物となった・・。
病棟窓口で「オムツは持参ですか?」と聞かれ、コロッとそんなこと忘れてた私達は、素直に「ありません。」と回答。
結局、オムツの方は病院のものを提供してもらい、使った分だけ後で清算という事になった。
便利だね。
近所の病院なら、毎日着替えを持って行ったりできるんだけど、不便な所にある病院だし、コロナのせいで面会もできない。
それに、色々なものを自前で準備しなければいけないので、入院手続きには、大荷物を持った人や、ゴロゴロとキャリーケースを引きずってくる人などでごった返していた。
ここで、一人で歩けない母を、どうやって病棟まで移動させたのか、不思議に思う方もいるでしょう。
病院には、当たり前のように、車椅子があるんですよ。
普段は目にも止めなかったけど、わざわざ受付に依頼しなくても、玄関にたくさん折りたたんで準備してあるんです。
車から一足先に降りた私は、車椅子のある場所まで走っていき、玄関前でどうにか母を移動させ、車椅子に乗せれば、後は楽々移動できるわけです。
寝ている所から母を動かすわけではなく、既に座っている車の座席から滑らせるように車椅子に移動させるので、そんなに難しい事ではないのでした。
さすが病院、不自由な人のため導線が行き届いています。
入院手続きは午前10時から。書類を書いて終了!・・な訳なかった・・。
そんな訳で、病院に到着し、入院専用カウンターで受け付けを済ませる。
大病院の受付はどの窓口でも混んでいるけど、ここは、入院受付専用の窓口というか部屋があり、カウンターも5つ位ある。
カウンターの奥にも沢山の事務員が働いており、ここでは無限の雇用が生まれているなと、道民生活25年の私は、都会な事にちょっぴりビックリ。
番号を呼ばれ席に着くと、入院申込書とか誓約書的な書類を渡され、なんかよく分からないけど、署名。
その後、事務の人からこんな事を言われる。
病棟が一杯なので、ベッドが空くのがお昼過ぎとなります。
それまでお待ちください。
4人部屋を希望されてましたが、本日個室しか空いていなく、差額が発生します。
よろしいでしょうか??
え・・、今、10時前なんだけど・・。
それと、個室しか空いてないって・・?
個室で困るわけでもないんだけど、お金の事もあるし、一応父に確認した方がいいかな??
父は、待合室の外にいるんだけど・・。
ん???
ちょっと待てよ??
確か、大部屋を希望していたのに、病院側の都合で個室にされた場合は、差額ベッド代は払わなくていいはず・・。
言うか?
その事を・・。
・・・・・・。
え、・・。
しかし、支払いは私がするわけじゃないし、ここでごねるのもなぁ・・というのが、正しい大人の迷いではなかろうか??
ほんの数秒だが、考えている私を見て、受付のお嬢はこう言った。
・・。
経済的に、厳しいですかね??
あ、出た!
誘導尋問!
私は、渡りに船とばかりに「ええ・・、ちょっと・・。」と言葉を繋いだ。
それを聞いた受付のお嬢は、「上のものに確認してきます。」と言って奥に下がり、「今回は差額はいただかなくても、個室に入れることになりましたので。」と上司の承諾を取り付けてきてくれた。
わぁ~い、ありがとう。
さすが大病院、コンプラが行き届いている。
昨今は、こういう事で揉めると、あっという間に拡散されるからね。
もちろん私はそんな事はしないけども。
手続きだけかと思ったら、検査に医師からの説明etc.でぐったり
さて、入院は、書類を書いて、母を病棟に送ったら終了!
と思っていたけど、なんと、受付票と院内地図を渡されて、エックス線と生体検査、血液検査の三つを受けてこいという。
マジか・・。
この、混んでいる時間に、混んでいる検査とは・・。
しかも、地図を渡されるくらい、それぞれのブースが離れている。
もう、迷宮の大病院ていうか、魔宮の伝説・・・。
血液検査は採血だけなので、車椅子でもあっという間だが、エックス線や心電図などは、そうもいかない。
まずは、入院患者専用の待合で、これまた待たされる。
みんな大変な患者さんだから、健康診断のように、ササッとは終わらないのだ。
それは、うちの母も例外ではなく、ベッドに乗せたり、台に乗せたり、一定の姿勢を保ったりと、常に介助が必要で、一つ一つの動作に、とても時間がかかる。
技師さんとかも手伝ってはくれるんだけど、基本は付き添いが介助しなければならないようだ。
たまに帰って来た姉に、仕事を与えようと、妹は外でスマホをいじって余裕のよっちゃん。
それにしても、病院の設備というのは、便利に出来ているもんだ。
母の介助は体力を要したが、病院のベッドとか台とか検査機械って、色んなところが動くようになっていて、行き届いているのだ。
こりゃ、母が退院したら、介護ベッドだけでも用意せねばいかんな。
そんなこんなで、3つの検査が終わるころには、もうぐったり。
そのころには、ベッドがもう空く時間となっていた。
やっとの思いで入院受付に戻ると、病棟の場所を案内される。
ああ・・、これで母を送り届けたら帰れると思いきや、病棟に辿り着くと、今度は医師からの説明があるという。
母を見送り、更に病棟の外で待たされる、私と妹と、影の薄い父。
病棟内にはロビーというか、自販機が置いてある談話室みたいな所があるのだけれど、今はコロナのせいで、入院患者以外使えない。
仕方なく、廊下のパイプ椅子で待っていると、看護師さんから病棟の独立した部屋へ通され、大量の書類を渡される。
誓約書や、健康やアレルギーについての問診票、輸血や検体提供についての同意書、副作用や手術の事故についての同意書等々。
特に、血管造影検査については、その検査ごとに同意書が必要らしく、全く同じ書類にいくつもサインをし、もうすでに訳が分からない状態となっている。
医師の説明が終わったら、これら全ての書類にサインをしなければならず、正直もう、うんざりだよ!
1枚にしてくれ1枚に(涙)。
ここで、やっと医師登場。
私は初めてお会いするんだけど、それは向こうも同じで、「あれ?今日はいつもの方と違いますね。」とか言われたが、「長女です」と言って流しておいた。
母の病状についての医師の説明と手術のリスク
母の病状について、医師から説明が始まる。
まずは、CTやMRIで撮影した、母の頭の写真を見せられたが、こりゃひどい。
素人の私にも分かるくらいの、でっかい腫瘍が映っている。
それよりも、驚いたのは、前回の手術跡だ。
手術の後は、皮膚や組織が覆うので、外見では分からないが、写真を見れば、前回手術をした跡が、ハッキリくっきり映っている。
母は前回、おでこのあたりの頭蓋骨をくりぬいたんだけど、骨同士は完全にくっついたりはせず、分かるくらいのすき間となって写真に残っている。
・・、脳ミソ漏れたりしないんか??
(しません)
骨と骨を繋ぎ合わせる留め具もハッキリと映っていて、写真だけ見たら、まるで漫画『ゴールデンカムイ』に出てくる、鶴見中尉のようであった。
鶴見中尉が分からない人は、人造人間キカイダーのようだとでも言っておこう。
(おおおおおぉ、すげえな・・。)←別に感動しているわけではない。
腫瘍が大きいので、今回は、前回切り取った部分より、さらに大きく骨を切り取るとの事。
腫瘍は、脳の中ではなく、脳を覆っている膜の所にできたもので、それが大きくなり、脳を圧迫しているという。
なんたら性(覚えてない)髄膜腫といって、脳を覆っている袋の外側に腫瘍ができて、それが水風船みたいに内側にふくらんでいる状態のようだ。
出来た場所とか大きさによっては、手術も必要ないらしいが、母のは大きくなりすぎて、脳を圧迫しているから、マヒが起きたり、妄想状態だったり異常行動が起こったりという事らしい。
頭の中に、ナスがいっこある感じですね。
と、医師は、あまりピンとこない例えをしたが、実際に腫瘍はそれ位あり、一部頭蓋骨の外にまで滲出して、母の額は、たんこぶの様になっていた。
その後、医師は
・出来るだけ頑張るが、腫瘍の全ては手術で取り切れない可能性がある事。
・手術はおおむね12時間位を予定しているが、深夜に及ぶ可能性がある事。
・手術中に頭が動かないよう、ネジのようなもので頭を固定するが、高齢者はその時骨にヒビが入る事があり、その場合は手術は延期になる事。
・術後は、頭蓋骨を切り取ったサイズに合わせて、人工骨のカバーを使用する予定だったが、完成が間に合わなかったため(本来の手術の予定は、1ヵ月以上先だった)、医療用の金属やメッシュ、人工骨などを駆使し、術部を塞ぐ事になった事。
(よく分からないけど、「女性だから、サイズの合ったプレートをと思った。」という事を先生が言ってたから、多分見た目の問題か?)
・術後や術中に、髄液漏れや、出血の可能性がある事。
・出血が起こった場合、脳梗塞の危険性がある事。
・術後は、高確率で意識の混濁や幻影、徘徊、自己での抜管(点滴の管とかを自分で抜いてしまう行為)などが起こりやすく、その場合は、ベッドに拘束する事。
・予後によっては、放射線の治療がある事。
・今の麻痺の状態が完治する保証はできない事。後遺症として、言語が不自由になったり、視力に影響が出たりすることがある事。
・術後は、暫くはリハビリが必要で、状況によってリハビリ専門病院に転院するか、デイサービス等を利用するか決めなければならない事。
等について説明し、去っていった。
はぁ、しかし、これで帰れると思ったら大間違い。
5000文字超えたので、次回に続く。
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